就業規則違反とは?企業の正しい対応手順と懲戒処分の基本を徹底解説

大きな就業規則の本と背景の天秤を中心に、人事担当者と従業員が向き合う場面を描いたイラスト(会社ルールと違反対応の象徴)

従業員が就業規則に違反した場合、企業はどのように対応すべきか悩む場面は少なくありません。

悩める若手社長

「軽微な違反でも処分は必要なのかな。。」
「証拠はどう集めればいいのだろう」
「退職後に違反が分かったらどうすればいいの」

といった疑問を抱える担当者も多いのではないでしょうか。

就業規則違反は、会社の秩序や信頼関係に直結する重大な問題です。対応を誤れば従業員とのトラブルや法的リスクに発展する可能性もあるため、正しい知識と手順を押さえておくことが重要です。

今回の記事のポイント
  • 就業規則違反とは何か、典型的な行為の具体例
  • 違反を発見した際の初期対応と事実確認の進め方
  • 違反に応じた懲戒処分の種類と進め方
  • 退職後に違反が発覚した場合の企業対応と予防策
記事の執筆者

社会保険労務士 志賀佑一

社会保険労務士志賀佑一事務所代表。

経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。

社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。

最後まで読むことで、就業規則違反への対応を体系的に理解し、トラブルを未然に防ぐための実務ポイントが身につきます。

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目次

就業規則違反の基礎知識|企業がまず押さえるべきポイント

就業規則違反は、企業の秩序や信頼関係に直結する重要な課題です。ルールの定義や典型的な違反行為を理解しておくことで、従業員への説明やトラブル防止につながります。

就業規則違反とは何か?

就業規則違反とは、会社が定めた服務規律や禁止事項に反する行為を指します。就業規則は、労働条件や職場でのルールを明確にし、従業員と会社双方が円滑に業務を進めるための「社内ルールブック」の役割を果たしています。

従業員がこの規則に反した場合、会社はその内容や程度に応じて、懲戒処分を行うことがあります。

ただし、処分に至るまでには事実確認や従業員への弁明の機会を設けるなど、適切な手続きを踏む必要があります。

これは、後々のトラブルを回避するためにも重要なプロセスです。

就業規則は従業員にとって守るべきルールですが、雇用契約書と内容が矛盾する場合もあります。その際の判断基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。

就業規則違反にあたる具体的な行為例

就業規則に違反する行為は、企業や業種によって具体的な内容は異なりますが、一般的には以下のような行為が挙げられます。

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主な違反行為内容の例
遅刻・早退・無断欠勤勤務時間を守らない、無断で欠勤する
業務命令違反上司の正当な指示に従わない
職務怠慢勤務中に業務を怠けたり放棄する
ハラスメント行為セクハラやパワハラなどの不適切行為
情報漏洩社内の機密情報を外部に持ち出す
備品の不正使用会社の物品を無断で持ち出す
社内不正賭博行為や会社の信用を損なう行為

これらの行為は懲戒処分の対象となる可能性が高く、場合によっては出勤停止や解雇といった重い処分に至るケースもあります。

そのため、企業は就業規則を明確に定め、従業員に十分に周知徹底することが求められます。

就業規則違反を発見したときの企業対応プロセス

違反を見過ごすと、職場全体の規律が乱れるだけでなく、後に大きなトラブルに発展するリスクがあります。適切な対応手順を整理しておくことで、公平性と法的安定性を確保できます。

就業規則違反を発見した際の初期対応

従業員による就業規則違反を発見した際には、まず冷静かつ客観的に事実確認を行うことが重要です。感情的に対応してしまうと、後々トラブルに発展する可能性があります。

初期対応の流れとしては、

  1. 違反行為の有無を確認
  2. 状況や経緯を把握
  3. 必要に応じて関係者から情報収集

といった段階を踏み、事実を整理した上で次の対応につなげます。

この時点で処分を決めつけるのではなく、あくまで「正確な情報を揃える」ことが目的となります。


違反の事実確認と証拠の集め方

就業規則違反が疑われる場合には、客観的な証拠を確保することが不可欠です。本人の言い分だけではなく、第三者が見ても納得できる根拠を集めることが後の対応を円滑にします。

証拠として有効な例は以下の通りです。

  • タイムカードや勤怠システムの記録
  • メールやチャットの送受信履歴
  • 目撃者や同僚からの証言

証拠を集める際には、プライバシーへの配慮も欠かせません。必要以上に私生活を侵害しないことや、取得した証拠を適切に保管することが、会社としての信頼を守る上でも大切です。

従業員への事情聴取と弁明の機会付与

事実確認が進んだ段階では、対象となる従業員に対して事情を聴取し、弁明の機会を与えることが求められます。これは法律上の要請でもあり、適正な手続きを踏むうえで欠かせないステップです。

聴取の際には、

  • 感情的にならず、冷静に質問する
  • 違反行為の状況や経緯を確認する
  • 本人の言い分を丁寧に記録する

といった点に注意することが必要です。

従業員の弁明内容も含めて総合的に判断し、処分の要否や内容を検討していくのが望ましい対応です。

就業規則違反に対する懲戒処分の種類と進め方

懲戒処分は従業員への大きな影響を伴うため、種類や進め方を正しく理解しておくことが欠かせません。違反内容に応じて相当な処分を選択することが、後の紛争防止に直結します。

懲戒処分の種類と選び方

懲戒処分には、軽い注意から最も重い解雇まで、段階的な種類が用意されています。これらは就業規則に明確に定められている必要があり、その範囲を超えた処分は無効とされる可能性があります。

一般的に見られる懲戒処分は次の通りです。

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種類内容の目安
戒告口頭や文書による注意・指導
譴責(けんせき)文書での厳重な注意、始末書の提出など
減給一定割合の賃金を減額(労基法に上限あり)
出勤停止一定期間の就労禁止、賃金不支給
降格役職や職務上の地位を引き下げる
諭旨(ゆし)解雇自主退職を促す最終的措置
懲戒解雇最も重い処分で即時の雇用契約終了

処分を選択する際には、違反行為の重大性や従業員の勤務態度、過去の違反歴などを総合的に考慮する必要があります。

志賀佑一

軽微な違反に対して過度に重い処分を科すと、不当な懲戒として争われるリスクが高まります。

そのため、基本的な考え方は「軽い違反には軽い処分、重大な違反には重い処分」とし、処分の相当性を常に意識することが重要です。

懲戒処分を行う際の注意点

懲戒処分を行う際には、会社の判断だけで進めるのではなく、法的に有効な手続きを踏むことが求められます。これを怠ると、後日従業員から不当処分として争われるリスクがあります。

特に注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 就業規則に懲戒事由が明記されていること
  • 処分の内容が行為に対して相当であること
  • 従業員に弁明の機会を与えること
  • 処分内容を文書などで明確に伝えること
  • 処分に関する記録を作成・保存しておくこと
志賀佑一

これらを確実に押さえておくことで、会社は適切な対応をとったことを後から証明しやすくなります。

懲戒処分の有効性を保つためには、就業規則の内容そのものが適切に整備されていることが前提となります。規則を変更する場合の注意点は、以下の記事も参考にしてください。

懲戒解雇を行うための手順と要件

懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重い処分であり、労働者にとっての影響も非常に大きいため、慎重な判断が必要です。

有効に行うためには、次の要件を満たすことが求められます。

  • 就業規則に懲戒解雇事由が規定されている
  • 違反行為が著しく重大である
  • 他の処分では対応できないと判断される
  • 手続きにおいて従業員に弁明の機会を与えている

懲戒解雇を行う際には、客観的に見て解雇が相当と認められるかどうかが重要です。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法|e-Gov 法令検索

もし判断に迷う場合には、専門家に相談しながら進めることで、不要なトラブルを避けることができます。

退職後に就業規則違反が発覚した場合の企業対応

退職後に違反行為が判明した場合、企業が取り得る選択肢は限られています。処分ではなく、規程の根拠に基づく対応や損害の回復手段を知っておくことがリスク管理に役立ちます。

退職後の就業規則違反への対応

従業員が退職した後に、在職中の就業規則違反が発覚する場合があります。しかし、労働契約が終了しているため、懲戒処分を行うことはできません

それでも会社に損害が生じている場合には、民事上の手続きを検討することになります。

具体的には、損害賠償請求や退職金返還請求が挙げられます。ただし、いずれの場合も証拠の確保や規程の整備が前提条件となります。

退職金や損害賠償に関する対応ポイント

退職後に会社として取り得る手段は限られています。前述の通り、代表的なものは以下のとおりです。

  • 損害賠償請求:情報漏洩や備品の横領などにより会社に損害が発生した場合に請求可能
  • 退職金返還請求:退職金規程に「不正行為があった場合の返還条項」が明記されている場合にのみ有効

ここで重要なのは、規程上の根拠がなければ請求が認められにくいという点です。

事前に退職金規程や就業規則に明確な条項を設けておくことが、退職後トラブルを防ぐ鍵となります。

就業規則違反を未然に防ぐための仕組みづくり

違反を防止するためには、ルールを形だけで終わらせず、職場に浸透させる工夫が必要です。周知や研修だけでなく、相談しやすい体制や風土づくりも重要な要素となります。

就業規則違反を未然に防ぐ対策

違反行為は、発生してから対応するよりも、起こらないようにする取り組みの方が圧倒的に効果的です。就業規則を単なる形式的な規程とせず、従業員にとって「理解しやすく実践しやすいルール」として浸透させる工夫が必要です。

例えば、就業規則の内容を毎年の入社時研修や管理職研修に組み込み、従業員に繰り返し触れる機会を作ることが有効です。

また、違反行為が会社に与える悪影響や、従業員自身のキャリアへの影響を実例を交えて解説することで、規則の重みを実感してもらいやすくなります。

さらに、違反を未然に防ぐ取り組みは「企業文化」として定着させることが重要です。

志賀佑一

管理職が率先してルールを守る姿勢を示すことで、現場全体の規範意識が高まります。

そもそも就業規則が存在しない場合、トラブルの予防どころか、重大な法的リスクを抱えることになります。未整備のリスクについては、こちらで詳しく解説しています。

周知・研修・相談体制の強化

違反防止を徹底するには、一度の説明や規則配布だけでは不十分です。継続的な周知と教育が不可欠です。

定期的な研修・面談

新入社員だけでなく、既存社員も対象とした継続的な研修を実施することで、ルールの理解度を高め、曖昧な点を解消できます。管理職との定期面談を通じて、現場の課題や不安を拾い上げることも有効です。

相談窓口の設置

ハラスメントや職務上の不安を抱えたまま放置すると、重大な違反につながりかねません。匿名でも相談できる窓口や外部相談機関の導入は、早期発見・早期対応に直結します。

職場風土の改善

「規則を守らせる」だけでなく、規則を守りやすい職場づくりが大切です。長時間労働や過度なプレッシャーが常態化している職場では、違反や不正の温床になりやすいため、働きやすい環境整備も違反防止策の一環といえます。

このように、ルールを形式的に定めるだけでなく、従業員が理解し・相談でき・安心して働ける環境を整えることが、違反防止の実効性を高める鍵となります。

まとめ:就業規則違反への対応で押さえておきたい基本ポイント

就業規則違反は、企業の信頼や職場秩序を揺るがす大きなリスクにつながります。対応を誤ると不当処分として争われたり、トラブルが長期化したりする可能性もあるため、正しい手順を理解しておくことが欠かせません。

本記事で押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

押さえておきたいポイント
  • 就業規則違反は服務規律や禁止事項に反する行為である
  • 違反には遅刻・無断欠勤・情報漏洩など多様なケースがある
  • 発見時は感情的にならず、事実確認と状況把握を徹底する
  • 客観的な証拠を確保し、従業員に弁明の機会を与えることが重要
  • 懲戒処分は種類を理解し、行為に応じて相当性を保つ
  • 退職後の違反は懲戒できず、損害賠償や退職金返還で対応する
  • 予防には周知・研修・相談体制の整備が効果的

これらを実務に取り入れることで、就業規則違反に対して公平かつ一貫性のある対応を行い、職場の健全な運営を守ることが可能になります。

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