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就業規則を届け出る際に必要とされる「意見書」について、次のような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
意見書とはそもそも何のために必要なの?
誰が書くべきで、どうやって選ばれるの?
書かないとどんなリスクがあるのだろう?
記載内容や提出のルールはどうなっているのだろう?
形式的な書類だと思って軽視すると、労働基準監督署に受理されなかったり、従業員とのトラブルを招いたりする恐れがあります。適切な理解と準備が欠かせません。
社会保険労務士 志賀佑一
社会保険労務士志賀佑一事務所代表。
経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。
社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。
最後まで読んでいただければ、就業規則の意見書を正しく作成・提出し、労使間の信頼関係を保ちながらスムーズに規則を運用できる未来が見えてくるはずです。
就業規則の意見書は、労働者の声を取り入れるために欠かせない書類です。形式的な提出義務にとどまらず、職場のルールづくりにおける公正さや透明性を示す証拠としても機能します。
就業規則の意見書とは、会社が就業規則を作成または変更する際に、労働者代表の意見を記録した書類のことです。これは、労働基準監督署へ就業規則を届け出る際に必ず添付が求められる重要な手続きです。
(作成の手続)
労働基準法|e-Gov 法令検索
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
意見書の目的は、会社が一方的にルールを押し付けることを防ぎ、従業員の意見を尊重した形で就業規則を整えることにあります。これにより、労使間の信頼関係を高め、職場環境の透明性を確保する役割を果たします。
なお、意見書自体には規則を変更する効力はありません。あくまでも労働者代表の意見を記録し、適切な手続きを経たことを証明する位置付けです。
しかし、後々トラブルが起きた際には「労使の協議を踏まえて作成された規則かどうか」を判断する大切な証拠となるため、欠かすことはできません。
あわせて確認しておきたいのが、就業規則そのものに関する基本知識です。例えば、就業規則と雇用契約書が矛盾した場合の扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
就業規則の意見書が必要となるのは、常時10人以上の従業員を雇用している会社です。ここでいう「従業員」には正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれる点に注意が必要です。
また、意見書に署名する労働者代表は、経営側の影響を受けない立場であることが求められます。特に管理職や使用者の意向を代弁する人物は対象外です。
代表者は従業員の意思を適切に反映できるよう、投票・挙手・話し合いといった公正な手続きで選出されなければなりません。
もし代表者の選出方法が不適切であると、意見書自体の効力が疑われ、就業規則の届け出が無効と判断される可能性があります。
したがって、従業員全体が納得できる形で労働者代表を決めることが重要です。
意見書が欠けていると就業規則の届出自体が成立せず、労使トラブルや法的リスクにつながる可能性があります。単純な手続き不足が、会社の信用や運用の実効性に影響することもあります。
就業規則の意見書を作成せずに届出を行おうとしても、労働基準監督署に受理されない可能性があります。意見書は就業規則の届け出に必須の添付書類であり、欠けていると「手続きが未完了」と判断されます。
さらに、意見書がないまま就業規則を運用した場合、従業員から「適切な手続きが行われていない」と指摘され、会社側に不利な判断が下されるリスクがあります。規則の内容に問題がなくても、形式面で不備があると正当性を欠くとみなされるのです。
就業規則に関するリスクは、意見書の不備だけではありません。就業規則自体が存在しない場合のリスクについては、こちらの記事で整理しています。
意見書を添付せずに就業規則を届け出た場合、監督署に差し戻されるだけではなく、労働基準法違反として処分を受ける可能性があります。
代表的な罰則は以下のとおりです。
このように、意見書の作成を怠ると、会社に金銭的・手続的な負担が発生します。単なる事務作業と軽視せず、正しく準備することが求められます。
就業規則の意見書に不備があると、労働基準監督署から具体的な指摘を受けたり、トラブルに発展する事例が見られます。
労働基準監督署からの指摘例
これらが原因で届出が差し戻されると、規則の施行が遅れたり、従業員とのトラブルが拡大したりするリスクがあります。
特に労使トラブルに発展した場合、「意見書の手続きに不備があった」という点が裁判で会社に不利に働くこともあるため注意が必要です。
意見書を整えるには、労働者代表の選出から記載内容の確認まで、段階的に進めることが大切です。作成の流れを押さえておくことで、届出のスムーズな完了と従業員の理解の確保につながります。
就業規則の意見書を作成する際には、適切な順序で手続きを進めることが重要です。流れを押さえておけば、届出がスムーズに進み、従業員の理解も得やすくなります。
一般的な手順は以下の通りです。
この流れを踏むことで、透明性のある就業規則が整備され、労使間の信頼関係が強化されます。
意見書を有効なものとするためには、労働者代表の選出が公正に行われていることが前提になります。会社が一方的に指名することは認められていません。
代表者の選出方法として一般的なのは以下の方法です。
主な選出方法
ここで注意すべきは、管理職や経営側の意向を受ける立場の従業員は代表になれないという点です。不適切な選出が行われると、意見書自体の効力が疑われ、手続きが無効とされるリスクがあります。
したがって、従業員全体が納得できる形で代表を選ぶことが欠かせません。
意見書に記載する内容は、法律で細かく規定されているわけではありませんが、最低限押さえるべき項目があります。
記載すべき項目
また、空欄を避け、意見の記載がない場合でも「異議なし」などの表現で明記すべきです。理由を添えることで、意見書の説得力が増します。
以下は、賛成・反対それぞれの記入例です。実際の様式は以下のリンクからも参照できます。
※ 公式PDF様式はこちら(厚生労働省 様式集「就業規則意見書 PDF」)
→ (参考)厚生労働省|就業規則意見書
賛成の場合の記入例
「社員一同、特に異議はなく、本就業規則に賛成いたします。」
反対または意義がある場合の記入例
「一部の規定について見直しが必要と考えます。例:休日規定が従業員にとって不利益であるため改善を希望します。」
こうした記載を行うことで、就業規則が従業員の声を反映したものであることを示すことができます。
意見書は就業規則とあわせて労働基準監督署へ届け出る必要があり、提出のタイミングや書類の正確性が受理の可否を左右します。事前準備を怠らないことが円滑な対応につながります。
就業規則の意見書は、作成または変更した就業規則とあわせて、所轄の労働基準監督署に提出します。提出期限については法律で明確に定められているわけではありませんが、一般的には就業規則の届出と同時に行うのが原則です。
もし意見書を添付せずに就業規則だけを提出した場合、監督署から確認を求められ、届出が受理されない可能性があります。そのため、就業規則が確定した時点で速やかに意見書を準備することが重要です。
提出後は、従業員に規則を適切に周知する義務もあります。周知方法や違反時の罰則については、以下で詳しくまとめています。
意見書の提出が遅れると、以下のような不都合が生じる可能性があります。
提出の遅れは形式的な問題にとどまらず、会社の信頼性や労使関係にも影響するため注意が必要です。
意見書や就業規則の届出書類に不備が見つかった場合には、監督署からの指摘を受けて修正・再提出を行うことが求められます。
このような場合は、監督署の指摘を受けて速やかに修正・再提出を行う必要があります。放置すると、規則の施行が遅れたり、社内のルールが曖昧になったりするリスクがあります。
したがって、提出前に書類の内容をダブルチェックし、必要に応じて専門家の確認を受けることが望ましいでしょう。
意見書の作成には「反対意見の扱い」「労働者代表が不在の場合」など、実務で迷いやすい点が少なくありません。誤解の多い論点を理解しておくことで、手続きを確実に進めることができます。
就業規則の意見書を準備する際には、担当者から次のような疑問が多く寄せられます。
結論として、意見書は「意見を聴取した事実を記録する書類」であり、賛成・反対どちらでも作成可能です。
会社は意見を聴く義務がありますが、必ずしも就業規則に反映しなければならないわけではありません。
従業員が少なく代表を決めづらい場合でも、意見書は省略できません。必ず従業員の中から労働者代表を選出する必要があります。
対応方法としては以下のような形が考えられます。
会社が直接「この人にお願いする」と指名することは認められていないため、公正さを保つ選出方法をとることが大切です。
多くの企業が誤解しやすい点として、「意見書に反対意見があったら規則を修正しなければならないのか?」という疑問があります。
前述の通り、会社には労働者代表の意見を聴く義務はあるが、その内容を必ず反映する義務はないということです。
つまり、反対意見が記載されていても就業規則の届出自体は可能です。
ただし、意見を無視し続けると従業員の不信感を招き、労使関係が悪化する恐れがあります。可能な限り従業員の声を考慮し、規則の見直しに反映する姿勢を示すことが、結果的に会社の信頼性を高めることにつながります。
就業規則の意見書は、会社が就業規則を作成・変更する際に労働者代表の意見を記録する必須の書類です。提出がなければ労働基準監督署で受理されず、場合によっては罰則の対象となるため注意が必要です。
また、意見書には賛成・反対どちらの意見も記載できます。大切なのは、労働者代表を公正な手続きで選出し、手順通りに作成・提出することです。形式的な義務にとどまらず、職場の透明性や労使の信頼関係を築くうえで欠かせない役割を担っています。
意見書の正しい書き方を押さえておけば、会社としての手続きの信頼性を高めると同時に、従業員が安心して働ける環境づくりにも直結します。
当事務所では、就業規則の作成・変更に伴う意見書の作成支援や労働者代表の選出手続き、さらには届出全般のサポートを行っています。
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