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2026年の労働基準法改正のニュースを見て、
「どこまで準備すればいいのか」
「勤務間インターバルや連続勤務の上限はどう変わるのか」
と不安を感じている人事・総務の方も多いと思います。実際、私の事務所にも同じ相談が増えています。
今回の改正内容は、連続勤務の上限規制や勤務間インターバルの義務化、法定休日の特定、有給休暇の賃金計算の見直し、つながらない権利、副業兼業の労働時間通算、週44時間特例廃止など、企業の働かせ方そのものに大きな影響を与えるものばかりです。
さらに中小企業では、36協定の運用や就業規則の改定、勤怠・給与システムの見直しなど、多くの対応を限られた人員で進めなければなりません。
「何から始めればいいのか」と悩むのも当然だと思います。
この記事では、社会保険労務士としての実務経験を踏まえ、2026年の労働基準法改正のポイントと中小企業がいつまでに何を準備すべきかを整理してお伝えします。

社会保険労務士 志賀佑一
社会保険労務士志賀佑一事務所代表。
経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。
社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。
すべてを一気に進めなくても大丈夫です。まずは「影響が大きい部分」と「今から着手できるところ」から一緒に整理していきましょう。
※今回の労働基準法改正は、2026年に法律へ反映され、そのうえで主要な制度は2027年4月から段階的に施行される見通しです(2025年11月時点)。

ここでは、2026年の労働基準法改正の議論の中でも、実務へのインパクトが特に大きいテーマを整理します。
連続勤務上限規制、法定休日の管理、勤務間インターバル、年休賃金、つながらない権利、副業兼業の通算ルール、週44時間特例の廃止などは、いずれも「これまでの運用を前提にしていると、いずれ壁にぶつかる」類いの改正です。
まずは内容を大づかみに押さえて、「自社の働き方・業種・勤務パターンだとどこが一番影響しそうか」をイメージしてみてください。
7つの主な改正ポイント

改正議論のなかで象徴的なのが、
連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止)
です。
現行制度では「4週4休」を満たしていれば、どれだけ長く連続勤務が続いても法律違反にはならず、「連続勤務は何日まで」という明確な上限もありませんでした。
そのため、実際の現場では、繁忙期や人手不足が重なると非常に長い連続勤務が発生してしまうことも珍しくありません。
今回の連続勤務上限規制は、単に「14日を超えなければ問題ない」という単純な話ではありません。
自社でチェックするポイント
といったところです。特にサービス業、医療・福祉、宿泊業、運輸など、慢性的な人手不足に直面している業種では、「この人しかできない仕事」が多いほど連続勤務のリスクが高まりやすいと感じています。
まずは、直近1〜3か月分のシフト表や出勤簿を眺めて、「連続勤務が10日を超えそうな人がいないか」「連勤になりがちなポジションはどこか」をざっくり洗い出してみるのがおすすめです。
ここでの注意点は、連続勤務の上限規制はあくまで「候補となっている内容」であり、最終的な制度設計や猶予期間は今後の法令や通達で具体化される見込みだということです。
したがって、現時点では「今の勤務体系のどこを見直せば安全か」「どのポジションに代替要員を育てておくべきか」を検討しておく段階と考えておくのが現実的かなと思います。
次に重要なのが、
法定休日の特定義務と振替休日ルールの厳格化
です。
これまで、就業規則上の休日の書き方が曖昧なまま運用されてきた会社も多く、「どれが法定休日で、どれが所定休日なのか」がはっきりしないケースもよく見かけます。
改正の方向性
が示されています。これによって、「とりあえずどこかで休ませておけばいい」という運用は通りにくくなっていくと考えた方がよいでしょう。
実務上は、まず就業規則の休日条文を見直し、
を整理しておく必要があります。法定休日まわりは、残業代計算や有給休暇の管理とも密接に関係しますので、労働時間の定義や判断基準もあわせて押さえておくと、全体像が格段に分かりやすくなります。

勤務間インターバル制度は、終業から次の始業までに一定時間以上の休息を確保するための仕組みです。ヨーロッパでは「1日の勤務と勤務の間に11時間の休息を置く」といったルールが一般的で、日本でもこれに近い水準が議論されています。
現行では努力義務にとどまっているものの、導入率はまだ一桁台と言われており、「制度としてはあるけれど、実態としては広がっていない」のが正直なところです。
改正の方向性
が検討されています。
実務で重要になるのは、「インターバルをどう守るか」よりも、「インターバルを守らざるを得ない勤務体系にどう変えていくか」という視点です。
例えば、
といった工夫が必要になります。インターバル違反が発生した場合に自動でアラートが出るよう、勤怠システム側の改修もセットで検討しておくと安心です。
年次有給休暇を取得したときの賃金計算方式については、現在、平均賃金・通常の賃金・標準報酬日額の3つの方式から選択できる仕組みになっています。
しかし、特に日給制や時給制の労働者に平均賃金や標準報酬日額を使うと、通常の賃金より低くなってしまうケースがあり、「年休を取ると損をする」状況が生じやすいのが問題視されています。
改正の方向性
が検討されています。これは、非正規雇用を含むすべての労働者が、経済的不安なく年休を取得できるようにするための流れと言えます。
企業側としては、
が必要になります。割増賃金や深夜残業の計算とも関連しますので、深夜残業の割増率や未払い防止のポイントとあわせて見直しておくと、賃金まわりの抜け漏れを防ぎやすくなります。
勤務時間外や休日にも、チャットやメールで業務連絡が飛び交う働き方が当たり前になりつつあります。その一方で、「休みの日も気が休まらない」「夜遅くにメッセージが来るのがストレス」という声もよく聞きます。これに対応する考え方として注目されているのが、いわゆる「つながらない権利」です。
日本での議論は現時点ではガイドラインレベルの想定にとどまっていますが、
企業側の対策
など、会社としての「コミュニケーションルール」をきちんと決めておくことが大事になります。
志賀佑一小規模な組織ほど、「暗黙の了解」で回ってしまう部分が多く、あとからトラブルになるケースも少なくありません。
就業規則や社内規程のどこかに、つながらない権利に関する基本方針を一度書き出してみると、運用の整理にもつながります。
つながらない権利は、長時間労働の是正やメンタルヘルスの観点とも深く結びつくテーマです。法規制としてどう位置づけられるかは今後の議論次第ですが、安全配慮義務の観点から見ても、早めにルール整備を進めておく価値は高いと考えています。
副業・兼業が一般化してきたことで、1人の労働者が複数の会社で働くケースが珍しくなくなりました。労働時間規制は「事業場ごと」ではなく「労働者単位」で適用されるのが原則なので、本来は複数の会社での労働時間を通算して、時間外労働の上限や割増賃金を考える必要があります。
改正の方向性
となっています。とはいえ、実務レベルで見れば、他社での勤務時間を正確に把握するのは簡単ではありません。
そのため、企業側としては、
といったステップが必要になります。副業禁止を一律に掲げるだけでは、現実の働き方と合わなくなりつつあるため、「健康を害さない範囲でどう認めるか」「どこまで情報提供を求めるか」を丁寧に設計していくことが大切です。
最後に、法定労働時間週44時間の特例廃止です。現在、商業・映画演劇業・保健衛生業・接客娯楽業など、一部の小規模事業場では「週44時間までが法定内労働」とされる特例が認められていますが、これを廃止し、すべての事業場で週40時間にそろえる方向で議論が進んでいます。
実は、この特例を使っていない事業場も多いのですが、旅館業や理美容、サービス業の一部では今も現役で活用されています。
特例が廃止されると、
といった影響が出てきます。対象となる業種の事業場では、36協定の上限規制や特別条項とあわせて、早めに労働時間の実態を棚卸ししておくことをおすすめします。


ここからは、2026年の労働基準法改正に向けて、企業が「いつまでに何をしておくと安全か」をロードマップ形式で整理していきます。
すべてを一気に完璧にする必要はありませんが、「就業規則などのルール整備」「勤怠・給与システムの見直し」「36協定や副業ルールの再設計」はどうしても時間がかかります。
法案の成立時期や施行時期は今後確定していく部分も多いですが、準備期間をフルに活かすためにも、「今から始めてもムダにならない対応」から優先して着手していくのがポイントです。


2026の労働基準法改正への対応で、まず見直し候補になるのが就業規則です。多くの改正項目は、
といった就業規則の根幹部分に関わってきます。
特に、休日に関する条文は、残業代計算やシフト管理に直結するため、これを機に条文を一度「日本語として読みやすい形」に書き換えておくと、社内説明もしやすくなります。
就業規則の変更には、労働者代表からの意見聴取や、労働基準監督署への届出が必要です。手続き面に不安がある場合は、就業規則の届出に必要な書類や手順も一緒に確認しておくと安心です。


勤務間インターバルの義務化や年休賃金の計算方法見直し、副業兼業の通算管理などは、いずれも「紙とエクセルだけ」で管理するには限界があります。
特に、
といった点は、あらかじめシステムベンダーと対話しておきたいところです。
システム改修は、見積もり〜要件定義〜開発〜テスト〜本番反映まで、どうしても時間がかかります。改正内容が確定してから動き始めると、施行日までに間に合わないリスクもあるため、
の4点は、早めにベンダーに相談しておくと安心です。
また、改修内容が複雑になるほど、「運用でどう使うか」「社内ルールとシステム仕様をどう合わせるか」のすり合わせが重要になります。
ルール先行で考えるのか、システムでできる範囲から決めるのかも含めて、現場の実情に合った着地点を一緒に探っていく必要があります。
長時間労働の上限規制(年720時間、複数月平均80時間など)はすでに罰則付きで適用されていますが、2026年の労働基準法改正では、これに加えて、
といった観点からの見直しもテーマになっています。



つまり、「形だけの36協定」から、「実態を反映した36協定」へという流れがさらに強まるイメージです。
今後は、時間外労働の実績を労働者代表に開示したうえで協定を締結するような形が標準になっていく可能性もあります。
単に書面を整えるだけではなく、「どうすればそもそも上限ギリギリまで働かせなくて済むか」という業務設計・人員配置の視点も欠かせません。
36協定まわりは、罰則だけでなく企業イメージにも直結する領域ですので、最新情報は必ず公的機関の資料で確認し、重要な判断は社内だけで抱え込まず、専門家の意見も取り入れていただくことをおすすめします。
2026年の労働基準法改正は、個々の条文だけを見ると「細かい話」に見える部分もありますが、全体としては、
といった、大きな方向性を持った改正です。ですので、単に「違反しないように最低ラインを守る」という発想だけだと、どうしても後手に回りがちになります。
中小企業にとっての現実的なスタンスは、「全てを一度に完璧にする」のではなく、「リスクが高いところから優先順位をつけて改善していく」ことです。
特に、健康障害につながりやすい長時間労働や連続勤務、過重な深夜労働などは、早めに着手しておく価値が高い領域です。
あわせて、労働時間の把握方法や賃金計算の根拠をきちんと説明できるようにしておくことも大切です。トラブルが起きたとき、客観的な記録が残っているかどうかで、会社が取れる選択肢は大きく変わってきます。
ここまで、2026年の労働基準法改正で議論されている主な論点と、企業が押さえておきたい準備のポイントを一通り整理してきました。改めて、ポイントをまとめると次のようになります。
2026の労働基準法改正は、確かに企業にとって負担も増えますが、裏を返せば、「働き方の見直しを進める絶好のタイミング」でもあります。
ルールを整えるだけでなく、業務の優先順位や人員配置を見直し、従業員の健康と生産性が両立できる体制を一緒につくっていけるといいなと思っています。
本記事の内容はあくまで一般的な情報と私の実務経験に基づく見解であり、すべての会社にそのまま当てはまるとは限りません。正確な情報は必ず厚生労働省などの公式サイトでご確認いただき、具体的な対応や条文案の作成にあたっては、最終的な判断を専門家にご相談ください。
2026年の労働基準法改正は、勤務間インターバルの義務化や連続勤務の上限規制、年休賃金の見直し、法定休日管理の厳格化など、企業の労務管理を大きく見直す内容が多く含まれています。
そのため、「自社はどこから着手すべきか」「どの制度を見直せば法令遵守になるのか」など、不安や疑問を抱える企業様も増えています。
当事務所では、こうした法改正に向けた準備や、就業規則・勤怠管理体制の見直しに関するご相談を多数承っています。 制度の整備が初めての企業様も、既存の仕組みが改正に対応できているか確認したい企業様も安心してご利用いただけます。
初回相談は無料で、オンライン・メールどちらでも対応可能です。お申し込みは下記のフォームから簡単に行えます。
当事務所の社会保険労務士が、あなたの会社の状況を丁寧にヒアリングし「どこから手をつけるべきか」「何を優先すべきか」を分かりやすくお伝えします。
労働基準法改正への対応は一社で抱え込む必要はありません。一緒に安心して働ける職場づくりと、法令に強い労務管理体制を整えていきましょう。