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給与制度や昇給・賞与のルールを整備したいけど、、
「この内容を賃金規程にどう書けばいいのか分からない」
「規程はあるけど、社員にうまく説明できない」
このような悩みはありませんか?
賃金規程は、法律に則った整備が必要なのはもちろんですが、実際の現場では「制度の見せ方」「社員への伝え方」も同じくらい重要です。
曖昧なルールや不十分な説明は、従業員の不満やトラブルの原因になりかねません。
そこで今回は、制度設計と実務運用の両面から、賃金規程を整えるためのポイントを整理してお届けします。
規程の見直しや制度構築のヒントとして、ぜひご活用ください。
社会保険労務士 志賀佑一
社会保険労務士志賀佑一事務所代表。
経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。
社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。
賃金規程とは、会社が従業員に支払う賃金の内容と支給ルールを明文化したものです。単なる書類ではなく、人事制度や経営方針と直結する重要な文書でもあります。
法令では、就業規則に賃金に関する一定の事項を記載することが求められていますが、実際には賃金の体系が複雑になるケースも多いため、就業規則とは別に「賃金規程」として切り分けて運用するのが一般的です。
就業規則は、労働条件全般を定めた文書であり、賃金・労働時間・服務規律などを含みます。その中の「賃金部分」を切り出し、詳細に整理したものが賃金規程です。
たとえば、就業規則に「賃金は規程による」と簡潔に記載し、具体的な内容は別添の「賃金規程」に委ねる構成とすることで、以下のようなメリットがあります。
一方、就業規則内に賃金規程を統合するケースもありますが、その場合でも労働基準法で定める「賃金に関する絶対的記載事項」をすべて含む必要があります。
企業の制度の複雑さに応じて、本則記載か別規程とするかを判断することが重要です。
制度設計の出発点は、「どんな報酬体系で、どんな人材を評価・処遇したいか」を明確にすることです。
規程はその結果を表す“ツール”に過ぎません。したがって、規程の整備を始める前に、まず制度そのものの方向性を定める必要があります。
賃金制度の設計は、企業が掲げる経営戦略や人材育成の方針と密接に関係します。制度設計で失敗すると、社員のモチベーション低下や不満の温床となるため、慎重な設計が求められます。
設計時に考慮すべき観点は、以下のとおりです。
なお、他社や業界全体の賃金制度・労働条件の傾向を把握したい場合は、労働政策研究・研修機構(JILPT)の統計データも参考になります。
制度設計においては、賃金規程は“表現ツール”に過ぎず、まず中身=報酬制度そのものをしっかり固めることが先決です。
理念先行でなく、現場にフィットした制度設計を行うことが成功のポイントです。
なお、賃金制度を設計する際には、どのような「賃金形態」を採用するかも重要な検討材料となります。それぞれの特徴や選び方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
制度の納得感を生むうえで、基本給や手当のルール設計は非常に重要です。特に手当については、誰にどのような基準で支給されるのかを明確に記載しないと、社員間で不公平感が生じやすくなります。
よくある手当の例としては、以下のようなものがあります。
たとえば、職務手当を一律で支給していた企業が、業務内容や責任の重さに応じて等級別に見直したことで、社員の納得度が向上し離職率が低下したという事例もあります。
賞与や昇給に関するルールは、社員にとって最も関心が高い部分です。特に評価制度と連動している場合、その仕組みが不明確であると、「評価は良かったのに昇給がなかった」といった不満が生じます。
規程上における表現の工夫としては、以下のような明記方法が有効です。
評価制度そのものが規程でなく社内資料等で別管理されている場合でも、評価の存在と連動の仕組みを示す一文は最低限必要です。明文化の有無が、制度の信頼性とトラブル回避に直結します。
どれほど整った制度であっても、社員に理解されなければ“機能していない制度”となります。納得感を得るには、制度内容を伝える仕組みが不可欠です。
制度の納得性を高めるには、情報の伝え方や対話の設計が欠かせません。以下のポイントを意識すると効果的です。
「評価が高かったのに昇給・賞与がなかった」という不満は、制度設計の不備というよりも、説明不足による認識のズレから生じるケースが多く見られます。
すべてのルールを規程に詳細に記載することが、必ずしも良いとは限りません。
とくに、業績に応じた変動賞与や評価配分ルールなど、年度ごとに見直す余地のある項目については、別途「支給要領」や「社内ガイドライン」で運用する方法も有効です。
その目的は以下の通りです。
ただし、その場合も社員に対し、「規程に記載がない=不透明」にならないように、補足資料の存在を明示する運用体制が必要です。
規程の文言には、法的リスクを避ける観点からも注意が必要です。実務上、以下のような曖昧表現は避けるべきとされています。
実際に「原則として支給」と記載されていた手当が廃止されたケースでは、従業員が不利益変更だと主張し、訴訟に発展した事例もあります。表現はできる限り具体的かつ客観的に整備しましょう。
賃金規程の整備には、「設計」だけでなく「運用」や「更新」の視点も欠かせません。特に実務では、雇用形態の違いに応じた対応や、改定時の手続きなどを押さえておく必要があります。
近年、特に注目されているのが「同一労働同一賃金」の考え方です。これにより、職務内容や責任が同等であるにもかかわらず待遇に大きな差がある場合、法的・社会的な指摘を受ける可能性が高まりました。
しかし、すべてを正社員と同じにすればよいという話ではありません。重要なのは、違いがある場合に「合理的な説明」ができる制度設計になっているかどうかです。
対応方法の例としては以下のような運用が考えられます。
例えば、「家族手当が正社員にしか支給されない」といったケースでは、「正社員は扶養手当を含む福利厚生の一環として提供している」という支給目的の記載が重要になります。
このように、単に「待遇が違う」という事実ではなく、その差が職務・責任・貢献度に基づいたものであることが明確に説明できる制度設計が求められます。
賃金規程を改定する場合、就業規則の変更手続きと同様に、法的なフローを踏む必要があります。 これは、企業の規模や改定内容によっては義務化されているものです。
なお、これらの手続きは労働基準法に基づき定められています。関連条文はe-Gov法令検索からご確認いただけます。
基本的な流れは次のとおりです。
ここで注意すべきは、「周知義務を怠ると、改定後の規程が無効とみなされる可能性がある」という点です。特に不利益変更(たとえば手当の廃止や減額)を伴う場合は、労働者一人ひとりの個別同意が必要となることもあります。
トラブルを防ぐためには、改定前に十分な説明期間を設ける、書面での通知と説明会を行う、質疑応答の機会を用意するなど、社内での合意形成の工夫が重要です。
また、賃金規程の改定では、「賃金支払いの法的ルール」を正しく理解しておくことが重要です。よくあるトラブルや罰則の事例を知っておきたい方は、以下の記事をご確認ください。
最も多い相談の一つが、「規程はあるけど誰も中身を理解していない」「人事も説明できない」という“死んだルール”の状態です。これは、制度の内容よりも運用体制の不備が原因であることが多く、せっかくの規程整備も意味をなさなくなってしまいます。
規程を“生きた制度”として機能させるには、以下のような運用体制づくりが有効です。
また、制度運用においては、「制度そのものが時代に合っているか」「社員の価値観とズレていないか」も定期的に確認する必要があります。
変化の激しい現代において、制度は“固定”ではなく“進化”させていくべきものです。運用体制と改善サイクルが整った企業ほど、賃金制度に対する信頼度・納得感が高く、社員の定着にもつながります。
賃金規程の整備は、単なる書面づくりにとどまらず、企業の人事制度全体を見直す大切な機会でもあります。公平性や納得感のある制度運用を目指すためには、どのような点に注意して整備を進めるべきなのでしょうか。
ここでは、賃金規程の整備に取り組む際に押さえておきたいポイントをまとめました。
賃金規程の整備は、経営と社員をつなぐ重要な“ルールの言語化”です。制度そのものの見直しから、現場での説明や改定の運用に至るまで、一貫した対応が求められます。
今回のポイントを参考に、自社の規程が今の時代や組織に合っているか、ぜひ改めて確認してみてください。
「制度はあるけれど、賃金規程が昔のままになっている」
「手当や賞与のルールが曖昧で、社員にうまく説明できない」
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制度の見直しは、「今すぐ全面改定」がゴールではありません。気になる点の確認や、方向性の整理からでも十分価値があります。
「何から手をつければいいか分からない」と感じたタイミングが、見直しの好機です。
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