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勤務間インターバルの義務化について、
「結局いつから対応が必要なのか」
「11時間ルールは何を守ればよいのか」
「違反すると罰則や行政指導はあるのか」
といった点は、多くの企業で判断に迷いやすいポイントです。
さらに、現在は努力義務とされている制度の位置づけや、中小企業も対象になるのか、シフト制・交代制勤務でも実務上どのように運用すべきか、就業規則を見直す必要があるのかなど、2026年の労働基準法改正の議論と合わせて検討すべき論点は少なくありません。

社会保険労務士 志賀佑一
社会保険労務士志賀佑一事務所代表。
経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。
社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。
本記事では、勤務間インターバル義務化について、制度の考え方から実務対応のポイントまでを整理し、自社として何から着手すべきかを判断しやすくなることを目的に解説します。

まずは「今どうなっているのか」を押さえましょう。努力義務と義務化の違い、開始時期の見通し、11時間という数字の意味、違反時に起きること、対象範囲までを実務目線で整理します。

勤務間インターバルとは、「終業から次の始業まで、一定の休息を確保する」仕組みのことです。ここで大事なのは、現時点では多くの業種で“努力義務”という位置づけであることです。
努力義務って聞くと、「やるかどうかは会社の自由でしょ?」と思われがちですが、実務ではもう少し複雑です。
努力義務は、法律上「努めなければならない」とされている状態で、今すぐ罰則が飛んでくるタイプの義務ではないことが多い一方、行政としては企業に取り組みを促す立場なので企業側の説明責任がじわじわ重くなっていきます。
たとえば、長時間労働の是正がテーマになっている会社や、慢性的に残業が多い部署、深夜・早朝勤務が入りやすい職場だと、「休息が足りない勤務が続いていないか?」という視点で、労務管理の弱点が浮き彫りになりやすいです。ここ、実務担当者としてはヒヤっとするところだと思います。
なぜかというと、インターバルの話は単体で完結しないからです。
労働時間管理、健康管理、労災リスク、さらには採用・定着にもつながってきます。だから、努力義務の段階でも、「制度として入れてない」こと自体より「休息が確保できていない実態」があることがリスクになりやすいんです。
実務の感覚
努力義務の段階でも、監督署調査で「勤務と勤務の間が短い勤務が続いていませんか?」と聞かれることはあります。ここで何も説明できないと労務管理の印象が悪くなりがちです。罰則がないから放置でOK、とは言い切れません。
義務化は企業にとっての「選択肢」が減ります。
つまり、
制度を導入し、運用し、記録し、改善できる状態にしておく
このようなことが、コンプライアンスとして求められます。ここで重要なのが、義務化の内容は「11時間を一律で絶対」みたいな単純な形ではなく、原則・例外・最低ラインのように設計される可能性が高い点です。
ただし、制度の設計がどうであれ、義務化に近づくほど「社内にルールがない」「記録がない」「運用が属人化している」状態は苦しくなります。
だからこそ今の段階から“実務で回る形”に寄せていくのが一番ラクです。
(出典):厚生労働省『勤務間インターバル制度とは』
「いつから義務化?」は一番多い質問です。
結論から言うと、“決まった瞬間にすぐ義務”にはなりにくいです。
法律は、改正案の検討→国会提出→成立→公布→施行、というプロセスを踏みますし、企業の準備期間(周知期間)が置かれるのが一般的です。
ここ、よくある誤解なんですが、施行日が先だからといってギリギリまで何もしないのは危険です。
なぜなら、インターバルは「紙のルール」だけで動く制度じゃないからです。シフト編成、要員配置、勤怠システム、36協定の運用、管理職教育、こういう“現場の回し方”が絡みます。準備に時間がかかりますよね。
特に、①現場の慣習が強い、②人手不足、③夜間・早朝がある、④突発対応が多い、こういう職場ほど施行日が決まってから慌てると間に合いません。
働き方改革のときもそうでしたが、影響が大きい規制は企業規模で段階的になったり、一定の経過措置が付くことがあります。中小企業は実務負担の観点から猶予が議論されやすい領域です。
ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、猶予があったとしても「永遠に対象外」にはならないということです。猶予は“準備してね”の時間です。
志賀佑一社内の意思決定としては、「猶予があるなら、先に現状を整えるチャンス」と捉えるのがいいかなと思います。
2026年の労基法改正の議論の中でインターバルが俎上に上がっていることは、実務上「数年以内に対応が必要になる可能性が高いテーマ」と見ておくのが安全です。
制度の細部は変わり得るので、断定は避けつつも、会社としては準備を前倒しにしておく方が結果的にラクです。
施行時期や具体的な基準は今後の公式発表で確定します。ここは必ず最新の公表資料で確認してください。
当事務所サイト内でも、2026年の法改正検討と実務準備をまとめています。制度全体の流れを把握したい場合は、2026年の労基法改正で企業が備えるべき実務ポイントの記事も参考にしてください。


11時間ルールは海外基準(特にEUの休息時間の考え方)を背景に、日本でも「健康確保の観点で望ましい水準」として語られることが多い数字です。ここはワードだけが独り歩きしがちで、実務では誤解が起きやすいポイントです。
経営者や人事担当者が知りたいのはここだと思います。現時点の一般的な制度運用では、「必ず11時間でないと違法」と断定できる状態ではないケースが多いです(業種別の特例や別ルールがある分野もあります)。
ただし、「違法じゃないなら気にしなくていい」ではありません。現場感覚としては、11時間という数字は健康確保の基準として“説明しやすい物差し”になってきています。
会社としては「短い勤務間隔が続いていないか」「続くなら、どういう理由で、どうフォローしているか」を説明できる状態が理想です。
義務化されると、運用で起きがちなミスが2つあります。
「うちはルールを作ったのに、現場が追いつかない」ってよくあるんですが、インターバルはまさにそれが起きやすいテーマです。だから、就業規則より先に勤怠の実態データを見て“どこで崩れるか”を把握するのが大事です。
実務ポイント
制度が義務化される場合でも、「原則11時間」+「最低ライン」+「例外要件」など、複数レイヤーで設計される可能性があります。社内では、まず現状の勤務間隔が何時間になっているかを棚卸しするのが第一歩です。
インターバルは、単に会社の外で休めばいいという話ではなく、睡眠、食事、通勤、家庭の用事も含めた「生活時間」の確保が狙いです。だから、制度の説明をするときは理屈よりも「それって結局、寝る時間が削られるよね」という体感に寄せると、現場が納得しやすいです。
「違反するとどうなる?」は、罰則だけでなく行政対応もセットで考える必要があります。ここ、担当者としては怖い話に聞こえるかもしれませんが、先に構造を知っておくと落ち着いて対応できます。
仮にインターバルが義務化された場合、形式的には法令違反に該当し得ます。その場合、まず現場で起きやすいのは是正指導(是正勧告・指導票)で運用改善を求められることです。
ここで問われるのは、「なぜ起きたか」「再発防止は何か」「記録はあるか」です。
つまり、単発で短い間隔が出たことよりも、常態化しているか、管理できているか、改善の意思があるかが見られやすいです。
インターバル不足が発覚すると社内ではこういう摩擦が起きがちです。
ここで必要なのは、誰かを責めることじゃなくてルールと運用の設計です。現場に“守れるルール”を渡す、これが人事労務の仕事です。
また、インターバル不足は過重労働の評価や健康トラブルのリスク判断に影響します。企業側としては、安全配慮の観点で説明責任が問われやすいと考えておくとよいです。実際に体調不良や事故が起きたとき、「休息が十分だったか」は後から必ず見られます。
原則として、労働法の基本ルールは企業規模に関係なく適用されるのが通常です。そのため、勤務間インターバルも「大企業だけの話」とは考えないほうが安全です。ここ、特に中小企業の経営者の方が見落としがちなので先に釘を刺しておきます。
制度がどう設計されるかは今後の議論もありますが、実務で一番大事なのは、あなたの会社で「短い勤務間隔」がどのくらい出ているかです。対象範囲を気にするより先にデータを見てしまった方が早いです。
たとえば次のようなケースは業種を問わず短い勤務間隔が出やすいです。
適用範囲で現場が揉めるのは、たとえば管理監督者扱い、裁量労働、みなし労働、業務委託などが絡むときです。ここは、制度そのものよりも前提となる「労働時間管理の枠組み」が整っていないとグチャっとしがちです。
だから、インターバル対応は単体で考えるより、労働時間制度の棚卸しと一緒に進めるのが現実的です。
実務のすすめ
対象かどうかで悩む時間が長いほど、準備が遅れます。まずは「短い勤務間隔があるか」「あるならどの部門か」を見える化して必要な対策の優先順位を付けるのが一番です。
施行タイミングや猶予措置、実務上の運用の細部は、企業規模・業種の事情を踏まえて調整される可能性があります。ここは今後の制度設計で変わり得るため、施行日や具体基準は公式発表で必ず確認してください。


ここからは実務の話です。中小企業でも現実に回る運用に落とし込み、シフト制・交代制・緊急対応を含めて、管理・記録・就業規則まで「やること」を具体化します。
中小企業は「人が増やせない」「属人化している」「急な呼び出しがある」など、インターバル確保が難しい構造を抱えがちです。だからこそ、最初から完璧を目指すより、まずは実態把握→ボトルネック特定→優先順位付けが現実的です。
制度を入れようとすると、いきなり就業規則の話になりがちなんですが、実務的には逆です。まず「どのくらい短い勤務間隔が出ているか」を見ないと、どの対策が必要か判断できません。
おすすめは、直近1〜3か月の勤怠から「終業→次の始業」の間隔を抜き出して短い順に並べることです。勤怠システムがなくてもExcelで集計できます。
短い勤務間隔の原因は、だいたい以下のどれか(または複合)です。
原因が違うと打ち手も違います。残業型なら業務の平準化や締め作業の前倒し、シフト型なら組み方のルール化、呼び出し型なら当番制や一次対応の切り分けが効いてきます。
よくあるパターンと打ち手の目安
| 短い勤務間隔の原因 | 現場で起きがちな例 | まず効く対策 |
|---|---|---|
| 残業型 | 締め処理が夜遅くまで | 締めの前倒し・分担 |
| シフト型 | 遅番→早番が固定 | シフトルールでブロック |
| 呼び出し型 | 責任者が夜間対応 | 当番制・一次対応の整理 |
なお、数値や基準は今後の制度で変わり得ます。ここで書いた対策はあくまで一般的な目安です。


シフト制・交代制で一番やってはいけないのは、遅番→早番のように勤務間隔が極端に短くなる組み方を固定化することです。現場としては回っているつもりでも、本人の休息が削られて疲労が蓄積しやすくなります。
「みんな頑張ってるから回ってる」は、制度が厳格化すると通用しなくなります。シフトはルールでブロックしないと必ず穴が出ます。繁忙期や欠員が出たときに無理が集中するからです。
実務では次のようなルールが効きます。
勤怠システムが対応しているなら、前日退勤と翌日出勤の差が一定未満だとアラートが出る設定にするだけで、運用ミスがかなり減ります。ここで大事なのは「後から気づく」ではなく「組む段階で止める」ことです。
シフト現場で一番多いのは「退勤が伸びたのに翌朝の出勤はそのまま」という事故です。アラートがあると管理者が気づけます。打刻漏れも含めてデータの整備が前提になります。
交代制は、日勤→準夜勤→深夜勤のように連続性が強いぶん、休息が計画的に確保できないと厳しいです。よくあるのは、交代要員の欠勤で穴埋めが起き、結果として勤務間隔が削られていくパターンです。



ここは「欠勤時の代替要員プール」「応援のルール」「残業の上限」とセットで設計しないと、現場にしわ寄せがいきます。シフト制は制度が変わると一番影響が大きいので、早めに現場責任者と話しておくのがおすすめです。
トラブル対応や急な欠員で、どうしても短い間隔で出勤してもらわざるを得ない場面はゼロにできません。あなたも「現場を止められないんだよな…」って思うこと、あるはずです。だからこそ、制度設計としては「例外があり得るなら、どんな条件で、どんな手当てをするか」を決めておくのが重要です。
例外を想定していないと、現場はその場しのぎで動きます。結果、短い勤務間隔が常態化し、誰も責任を持てない状態になります。義務化の議論が進むほど、これは避けたいところです。
たとえば、例外対応を想定するなら次のような考え方が現実的です。
例外を設けるならセットで決めたいこと
例外があると、現場は楽になります。でも、楽になるほど例外が常態化しがちです。だから、運用設計としては「例外は月に何回まで」「連続は不可」「翌日は勤務を軽くする」など、制限を設けるのが現実的です。
このあたりは、実際の制度でどこまで認められるかに左右されるため、今後の公式情報を前提に調整してください。ここも断定は避けつつ、「例外を作るなら、制限と記録がセット」という考え方だけは先に社内で共有しておくとスムーズです。
罰則の有無は気になるところですが、実務で本当に怖いのは「罰則」だけではありません。健康障害・労災・安全配慮義務の文脈でインターバル不足が問題化するケースがあるからです。
罰則が整備されるかは制度次第ですが、企業にとって現実的なリスクは、トラブルが起きたときに「会社としてどう管理していたか」を説明できないことです。たとえば、体調不良、事故、メンタル不調、労災申請などが出たとき、勤務実態と休息の状況は必ず見られます。
ここで「記録がない」「例外が多い」「誰も把握していない」だと、会社として苦しくなります。逆に言えば、一定のルールと記録があって改善の仕組みが回っているなら、リスクは下げられます。
たとえば、残業時間が法定内でも夜遅くまで働いて朝早い勤務が続けば、睡眠が削られます。これが続くと疲労が抜けず、判断ミスや事故が起きやすくなる。現場はまさにそれを体感しているはずです。
また、36協定を含む労働時間管理の全体像と合わせて整備すると運用は楽になります。関連して、36協定の特別条項と上限規制の運用ルールを整理している記事も合わせて参考にしてみてください。
義務化が進むと社内ルールの明文化が重要になります。特に、次の点は就業規則・運用ルールに落とす場面が増えます。
就業規則って、つい「どう書くか」に意識が向きがちですが、実務は「どう運用するか」です。
たとえば、始業時刻を繰り下げる場合、誰が判断して、どのタイミングで本人に連絡して、給与はどう扱って、勤怠はどう記録するのか。ここまで決めないと現場は回りません。
また、例外対応を想定するなら「例外の申請・承認のルート」が必要です。「忙しかったから」で例外が増えると制度として崩れます。だからこそ、例外は“許す”より“管理する”発想が大事です。
実務のコツ
就業規則は「書けば終わり」ではなく周知と運用がセットです。制度が走り出した後に揉めやすいのは、例外対応や申請フローの曖昧さです。先に型を作っておくと現場の混乱が減ります。
管理職は「またルールが増えた…」と感じやすいので説明の仕方が大事です。
「守らないと罰則」よりも、「守ることで事故やトラブルを防げる」「チームが潰れない」という観点で話すと通りやすいです。
特に、シフト制の現場では管理職が“穴埋め役”になりがちです。管理職ほど短い勤務間隔が出やすいので、管理職自身を守る仕組みとして説明すると納得感が出ます。
もし、就業規則の作成・変更の流れを一度整理したい場合は、就業規則の作成・変更・運用ガイドに関する記事も参考にしてみてください。
最後に実務担当として押さえておきたい要点をまとめます。ここは社内共有にも使いやすいように、あえてシンプルに整理しますね。
最低限やっておきたいこと
義務化の議論は進んでいますが、細部は今後の検討で変わり得ます。



だからこそ、今の段階でやるべきは「数字に合わせて制度を作る」ではなく、自社の勤務実態を整えることです。
短い勤務間隔が出やすい部分を把握し、改善の優先順位を付ける。これができていれば、制度がどう決まっても対応がしやすいです。
大事な前提
制度の詳細(施行時期・対象・基準・例外要件・罰則等)は、今後の公式発表で確定していきます。正確な情報は必ず公的機関の公表資料をご確認ください。また、個別の勤務体系や人員体制によって最適解は変わります。社内で判断に迷う場合は早めに専門家へ相談して設計するのが結果的に最短ルートです
勤務間インターバル義務化は、制度の内容を理解するだけでなく自社の勤務実態・シフト運用・人員体制に当てはめて考えることが重要になります。
特に、
といった企業では、勤務間インターバル単体ではなく、他の法改正項目との関係も含めた整理が必要になるケースが多くあります。
2026年の労働基準法改正全体の流れや、勤務間インターバル以外の主な改正ポイント、企業が備えるべき実務対応については、以下の記事で整理しています。
なお、
「自社の場合、どこまで対応が必要なのかを一度整理したい」
「就業規則や勤怠運用が改正内容に合っているか確認したい」
といった場合には、2026年労働基準法改正に限定した実務対応チェックも行っています。
改正内容を踏まえ、自社に影響するポイントと、優先的に対応すべき点を整理するための対応としてご利用いただけます。