092-260-5463
受付時間 10:00~18:00(平日)

悩める若手社長「就業規則には何をどこまで書けばいいのか分からない」
「法的に必要な項目を入れているか不安」
就業規則の作成や見直しを進める中で、こうした悩みを抱える企業担当者は少なくありません。
実は、就業規則には法律で必ず記載しなければならない項目があり、それを怠ると罰則の対象になることもあります。
一方で、会社の裁量で自由に定められる項目も存在し、その区別を理解しておくことがトラブル防止の第一歩です。


社会保険労務士 志賀佑一
社会保険労務士志賀佑一事務所代表。
経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。
社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。
これらを理解することで、法令を遵守しつつ、自社の実態に合った就業規則を整備できるようになります。結果として、労使間のトラブルを防ぎ、従業員が安心して働ける職場づくりを実現できるでしょう。
「うちの就業規則、昔に作ったままかも…」
「何を見直せばいいのか分からない…」
そんな経営者・人事担当者の方のために、
就業規則の見直しポイントを“ひと目で確認できる”チェックシートを作成しました。
✅ 制度が古く、現行法に合っていないリスク項目
✅ 働き方・休暇制度など、見直しが必要になりやすい章構成
✅ 社員トラブルを防ぐためのルール整備チェック
を、チェック式で簡単に確認できるようになっています。
今なら【無料】で「5分でわかる!就業規則セルフチェックシート」 をプレゼント中です!


自社の就業規則が「今の働き方」「法改正」に合っているか、まずはこのチェックシートで簡単にセルフ診断してみましょう。


就業規則は、企業運営の基盤となる「労働条件の約束ごと」を文書化したものです。法令上の義務だけでなく、従業員との信頼関係を築くためにも、どのような事項を定めるべきかを正しく理解することが大切です。
就業規則の内容は、すべての企業が自由に決めてよいわけではありません。労働基準法では、記載すべき内容を「3つの区分」に分けて定めています。
それが、
の3つです。
| 区分 | 概要 | 主な内容例 |
|---|---|---|
| 絶対的必要記載事項 | 就業規則に必ず記載しなければならない事項 | 労働時間、賃金、退職・解雇 など |
| 相対的必要記載事項 | 制度を設けている場合に記載が必要となる事項 | 退職金、賞与、安全衛生、表彰・制裁 など |
| 任意的記載事項 | 会社が独自に定められる事項 | 企業理念、服務規律、福利厚生方針 など |
この3つの分類を理解しておくことで、「何を必ず書くべきか」「どこまで自由に定められるか」が明確になります。
結果として、会社と従業員の双方が納得できるルール作りが可能になります。とくに、法定義務である「絶対的必要記載事項」は、不備があると罰則(30万円以下の罰金)の対象となるため、注意が必要です。
就業規則の記載事項を明確に定める目的は、職場におけるルールを可視化し、トラブルを未然に防ぐことにあります。
労働条件や職場規律を具体的に示すことで、従業員が安心して働ける環境を整備でき、会社としても統一的な運用がしやすくなります。
法的には、労働基準法第89条で、常時10人以上の労働者を使用する事業場に対して、就業規則の作成と届出義務が課されています。
労働基準法(第89条)
労働基準法|e-Gov 法令検索
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則の作成・届出義務があり、変更時にも届出が必要です。
さらに、同条で「記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)」も定められており、これに従わない場合は行政指導や罰則の対象となることがあります。
就業規則を定める目的
このように、就業規則の記載事項は「形式的な義務」ではなく、企業経営の安定と信頼を支える重要な基盤です。単に法令を守るだけでなく、自社の組織文化や方針を反映した実効性のある内容にすることが求められます。


就業規則の中でも、必ず明記しなければならない項目が存在します。それが「絶対的必要記載事項」であり、企業の法令遵守や労働条件の明確化に直結する重要な要素です。
絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない項目のことをいいます。これは労働基準法によって明確に定められており、企業が任意に省略することはできません。
具体的には、「労働時間」「賃金」「退職・解雇」に関する内容がこれに該当します。
これらはいずれも、労働者の生活に直結する基本的な労働条件であり、不備があると法律違反となる可能性があります。
万が一、就業規則に記載がない場合や内容が曖昧な場合、労使トラブルの原因になるだけでなく、30万円以下の罰金が科されることもあります。



したがって、就業規則を作成・改訂する際は、まずこの絶対的必要記載事項を中心に内容を整えることが重要です。
就業規則の記載漏れや誤りは、罰則や行政指導につながることもあります。届出や書類の手続きの流れを詳しく知りたい方はこちらの記事も参考になります。
労働時間に関する事項は、就業規則の中でも特に重要です。従業員がどのような勤務体系で働くのかを明確にしておくことで、残業・休日・労働時間管理のトラブルを防ぐことができます。
就業規則では、次のような内容を具体的に定める必要があります。
これらを明示することで、会社としても適正な労働時間の把握と管理が可能になります。また、変形労働時間制やフレックスタイム制を導入する場合は、別途労使協定の締結や規程の明記が必要です。
曖昧な運用は、未払い残業や長時間労働の是正勧告につながる恐れがあります。自社の勤務実態に合った労働時間制度を定めることが、法令遵守と従業員の安心につながります。
賃金に関する記載も、就業規則の中で欠かすことができません。これは、従業員の生活基盤に直結する最も重要な要素であり、ルールを明確にしておくことで不信感や誤解を防止できます。
就業規則には、以下のような内容を具体的に記載する必要があります。
これらを定めることで、従業員は自分の給与がどのように決まるのかを理解し、会社も公平な運用を行うことができます。また、就業規則に基づいた賃金体系を構築することで、給与計算や昇給の判断基準を一貫して運用できるようになります。
不透明な賃金規定は、社内の不満やトラブルを招く原因になりやすいため、できるだけ具体的に記載することが望まれます。
賃金の定め方や支払い方法をより深く理解したい場合は、以下の記事もおすすめです。
退職や解雇に関する規定は、就業規則の中でも特に慎重な取扱いが求められる項目です。なぜなら、解雇は労使トラブルに発展しやすい分野だからです。
就業規則では、少なくとも以下の内容を明確に定めておく必要があります。
特に「解雇の理由」は、あいまいな表現を避け、具体的に記載することが重要です。たとえば「会社の秩序を乱した場合」など抽象的な表現だけでは、後に正当性が問われた際に説明責任を果たせないリスクがあります。
明確なルールを定めておくことで、従業員にとっても「自分の身を守るための基準」がわかりやすくなり、結果として信頼関係の構築にもつながります。
これらの項目は、いずれも会社経営における“根幹”に関わる部分です。絶対的必要記載事項が整っていない就業規則は、法的効力を欠くだけでなく、実務上の混乱を招く危険があります。



作成時は必ず、自社の運用実態と法令の要件を照らし合わせて確認することが大切です。


会社が退職金制度や賞与制度など、一定の仕組みを導入している場合は、その内容を明確に定める必要があります。制度運用の公平性と透明性を保つため、相対的必要記載事項を正しく理解し、漏れなく整備しておくことが求められます。
相対的必要記載事項とは、会社が特定の制度や仕組みを導入している場合に、就業規則へ必ず記載しなければならない事項のことをいいます。
言い換えると、「制度が存在しない場合は記載の義務がない」点が、絶対的必要記載事項との大きな違いです。
たとえば、退職金制度や賞与制度、安全衛生や表彰・懲戒制度などがこれに該当します。これらは会社ごとに設けている場合とそうでない場合があるため、「ある会社には必要」「ない会社には不要」となるわけです。
この相対的必要記載事項を定める目的は、制度運用の公平性と透明性を確保することにあります。就業規則に明記しておくことで、従業員が支給条件や制度の適用範囲を正確に理解でき、会社側も一貫した運用が行いやすくなります。
相対的必要記載事項の中でも特に「賞与制度」は多くの企業で運用されています。制度設計や支給ルールを整理したい場合はこちらの記事を参考にしてください。
相対的必要記載事項には、会社の制度運用に関わる多様な項目が含まれます。労働基準法や実務上の考え方に基づくと、主な項目は以下のようになります。
| 主な項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 退職手当に関する事項 | 支給対象者、算定方法、支給時期など |
| 賞与・臨時賃金に関する事項 | 支給条件、回数、算定基準 |
| 安全衛生に関する事項 | 健康診断、労災防止措置、安全委員会の設置等 |
| 職業訓練・教育に関する事項 | 研修制度、費用負担、資格取得支援など |
| 表彰・制裁に関する事項 | 表彰の基準や種類、懲戒の手続と内容 |
| 災害補償・業務外傷病扶助 | 労働災害・私傷病時の対応や補償内容 |
これらの内容を記載する際のポイントは、「具体的かつ明確に」定めることです。
たとえば賞与制度がある場合は「年2回支給」だけでは不十分で、支給時期・基準・対象者などを明示する必要があります。
また、相対的必要記載事項は会社ごとの制度設計によって内容が異なるため、自社の実態に合わせて柔軟に設計することが大切です。他社の就業規則をそのまま流用すると、運用上の齟齬が生じるリスクがあるため注意しましょう。
最終的には、これらの事項を明文化することで、従業員にとっても「会社のルールが見える化」され、安心して働ける職場づくりにつながります。


任意的記載事項は、企業の理念や方針を反映させることで、職場文化や行動指針を形づくる役割を果たします。法律上の義務はありませんが、自社の価値観を明文化することで、従業員にとって働きやすい環境をつくることができます。
任意的記載事項とは、会社が自主的に就業規則へ記載することができる項目のことを指します。法律で義務づけられているわけではありませんが、会社の方針や組織文化を反映させるうえで重要な要素です。
具体的には、次のような内容が挙げられます。
これらは「法律で定める義務事項」ではないものの、就業規則に記載しておくことで、会社としての価値観や判断基準を社員と共有しやすくなります。
特に、服務規律や企業理念を明記することで、従業員が日々の業務の中で「何を大切に行動すべきか」を理解できるようになります。



ただし、任意的記載事項を設ける場合でも、労働基準法やその他の法令・労働協約に反する内容を記載することはできません。
自主的に追加する内容であっても、法令との整合性を常に確認することが大切です。
任意的記載事項を設ける最大のメリットは、会社の理念や文化をルールとして可視化できる点にあります。
単なる「労働条件の規定書」ではなく、「会社と従業員の信頼関係を築くための指針」としての役割を果たすことができます。
主なメリット
一方で、任意的記載事項を盛り込みすぎると、就業規則全体が煩雑になり、運用が難しくなるおそれがあります。また、記載内容が抽象的すぎると、トラブル発生時に「会社の判断が恣意的」と見なされるリスクもあります。
そのため、任意的記載事項を設ける際は、以下のような点に注意しましょう。
注意点
任意的記載事項は、法的義務ではないものの、企業理念を浸透させ、社員の意識統一を図るための有効な手段です。形式的なルールではなく、実際の職場で生きた規程となるよう、内容と表現を慎重に検討することが求められます。


就業規則は一度作成して終わりではなく、実態や法改正に応じて見直すことが重要です。労働時間制度や雇用形態、懲戒規定などを定期的に点検し、自社の現状に即した内容へと更新していくことが、法令遵守とトラブル防止につながります。
労働時間の管理は、就業規則を定めるうえで最も重要なテーマの一つです。とくに、労働時間が不規則な業界や職種では、制度設計の精度がそのまま法令遵守とトラブル防止に直結します。
労働時間制度には、次のような仕組みがあります。
| 制度の種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 変形労働時間制 | 繁忙期・閑散期に応じて、労働時間を柔軟に設定できる |
| フレックスタイム制 | 始業・終業時刻を従業員が自律的に決定できる |
| 裁量労働制 | 業務の進め方を労働者の裁量に委ねる仕組み |
これらの制度を導入する場合は、就業規則に必ず明記し、さらに労使協定の締結や行政への届出が必要となります。形式的な記載だけではなく、自社の勤務実態や職種特性に合った制度を選ぶことが大切です。
とくに注意すべきなのは、制度を導入したにもかかわらず、実態が伴わないケースです。たとえば「裁量労働制」として運用していても、実際には上司が細かく指示している場合、制度の要件を満たしておらず違法と判断されることがあります。
労働時間の管理方法は、制度の導入と同時に「運用ルール」を整備しておくことが不可欠です。
正社員、契約社員、パート・アルバイトなど、多様な働き方が当たり前となった現代の職場では、雇用形態ごとのルール設計が欠かせません。
就業規則を一つにまとめる場合でも、雇用形態に応じて適用範囲や条件を明確にしておく必要があります。
たとえば、契約社員やパートタイマーの場合は、次のような事項を中心に明記します。
これらの内容を明示しておくことで、従業員は自分の雇用条件を正確に理解でき、会社も不必要なトラブルを防ぐことができます。
また、近年では「無期転換ルール(労働契約法第18条)」の対象者が増えており、契約更新や雇用継続に関する取り扱いがますます重要になっています。
自社に複数の雇用形態が存在する場合は、それぞれの実態に合わせた別規則の策定を検討するのが望ましいです。
懲戒処分に関する規定は、会社の秩序を守り、公平な運用を行うための基礎となります。ただし、懲戒処分は従業員にとって不利益を伴うため、その根拠や手続きを明確にしておかなければなりません。
就業規則に記載すべき主な内容として、以下が挙げられます。
とくに「秘密漏えい」「職場の秩序を乱す行為」などはトラブルになりやすいため、できる限り具体的に記載することが重要です。
抽象的な表現のままでは、処分の正当性が認められないケースもあります。
また、懲戒の内容が労働基準法に反したり、社会通念上著しく不当であった場合は、無効とされる可能性があります。



そのため、懲戒規定を作成・改訂する際は、客観的な基準と法的整合性を必ず確認することが求められます。
懲戒規程は、会社を守るための“盾”であると同時に、従業員の権利を守る“ルールブック”でもあります。明確で公平な内容にすることで、職場の信頼関係と規律を両立することができます。
就業規則の記載事項は、企業運営と労使関係の安定を支える最も基本的な仕組みです。法令に沿って正しく整備することはもちろん、自社の方針や働き方を反映させることで、実際に機能する規則となります。
主なポイントを整理すると、次のとおりです。
就業規則の記載事項を丁寧に整理し、自社の実態に合った内容に整えることで、会社と従業員の信頼関係を強化し、トラブルのない職場づくりを実現できます。
就業規則を整備した後は、運用や変更時の手続きも押さえておくことが大切です。関連記事もあわせてチェックしてみてください。
就業規則は、法令遵守のためだけでなく、会社と従業員が安心して働ける環境を整えるための大切なルールブックです。
しかし、「どこまで記載すべきか」「制度ごとの扱いは正しいか」など、実際の運用で迷われる企業様も少なくありません。
当事務所では、就業規則の作成・見直し・各種制度設計のご相談を無料で承っています。
初めて作成される企業様はもちろん、既存の規程を改訂したい場合や、法改正への対応に不安を感じている方にもご利用いただいています。
こんなお悩みはありませんか?
初回相談は無料で、オンライン・電話いずれの方法でも対応可能です。お申し込みは下記フォームから簡単に行えます。
社会保険労務士が貴社の状況を丁寧にヒアリングし、「何をどう見直せばいいか」「どこから手をつけるべきか」を具体的にアドバイスいたします。
就業規則の整備を通じて、安心と信頼のある職場づくりを一緒に進めていきましょう。
就業規則の届出は、作成・変更・周知など、一連の手続きの中でも重要なステップの一つです。届出だけでなく、就業規則全体の流れを体系的に理解したい方は、下記のまとめページをご覧ください。
就業規則の基礎から改定・トラブル対応まで、専門家の視点で分かりやすくまとめています。