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労働時間に関するルールは、一見シンプルに思えても、実務では判断に迷う場面が多くあります。
「この時間は労働時間に入るのだろうか…?」
「休憩中に対応した業務はどう扱えばいい?」
「待機や準備の時間は賃金を払うべきなのか?」
こうした悩みは、多くの企業が日々直面しているものです。
特に、業務のグレーゾーンが多い職場ほど、労働時間の解釈が曖昧になりがちで、企業と従業員の認識にズレが生まれやすくなります。その結果、未払い残業の発生や、労基署からの指摘につながる可能性も否定できません。
そこで、本記事では 「労働時間とは何か」 を正しく理解するために、基礎から実務運用までをわかりやすく整理しました。

社会保険労務士 志賀佑一
社会保険労務士志賀佑一事務所代表。
経営者、従業員、会社がともに3WINの組織づくりをモットーに、人材が定着する会社づくりのサポートに尽力。
社会保険労務士として独立後は人事労務支援に加え、各種研修や制度導入などを通じてリテンション(人材流出防止)マネジメント支援にも注力している。
読み終える頃には、労働時間に関する基礎がしっかりと整理され、実務で迷わず判断できるようになっています。
企業として適切な労働時間管理を進めるための“揺るがない軸”を、一緒に作っていきましょう。
労働時間を適切に管理するためには、まず“どのような状態が労働と評価されるのか”を正確に理解することが必要です。形式的な勤務時間だけでは判断できないポイントを押さえることで、実態に合った時間管理が可能になります。
労働時間とは、単に「働いていると見える時間」ではありません。
法律上は、従業員が使用者の管理下で業務に従事していると評価される時間 のことを指します。
ここで重要なのは、従業員が必ずしも手を動かしていなくても、業務のために拘束されていれば労働時間に該当するという点です。
たとえば、業務開始前に上司の指示で準備をしている場面や、業務に関する説明を待っている時間など、目に見える作業をしていない場合でも、使用者が管理している状態であれば労働時間に含まれます。
このように、労働時間とは「何をしていたか」よりも“どのような立場に置かれていたか”が判断の軸になります。企業としては、従業員が業務に関連して拘束されている時間を正確に認識し、管理することが求められます。
労働時間かどうかは、使用者の指揮命令下にあるかどうかが最も重要な判断材料です。ただし、この「指揮命令下」という言葉は抽象的で誤解されがちです。
指揮命令下に該当するかどうかは、以下の視点から総合的に判断されます。
| 判断の視点 | 内容 |
|---|---|
| 業務遂行の必要性 | 会社が業務として求めている行為か |
| 場所の拘束性 | 会社が指定した場所にいなければならないか |
| 時間の拘束性 | 指定された時間内に待機・対応が必要か |
| 自由利用の可否 | その時間を従業員の自由に使えるか |
例えば、上司から「この後の会議で説明するから待機していて」と言われた場合、その時間に私用はできません。このような状況は明確に指揮命令下と判断されます。
逆に、休憩時間中であり、私用スマホの利用や外出が自由に認められている場合は、原則として指揮命令下とはいえません。
このように、同じ“待っている時間”でも、状況によって評価が変わります。
企業としては、判断が曖昧になりやすい時間帯(始業前後・休憩前後・隙間時間など)ほど、ルールを明確化し、従業員の状況を把握することが求められます。
労働時間に関する誤解が多い理由の一つは、「見た目の働き方」だけでは判断できない点が多いことにあります。
業務をしているように見えても労働時間でない場合がある一方、雑談をしているように見えても業務の一環として扱われるケースも存在するためです。
特に誤解が生じやすい場面として次のようなものがあります。
誤解が生じやすい場面
これらの場面では、従業員と企業側で「どこからが労働時間なのか」という認識のズレが起きやすく、トラブルにつながることがあります。
誤解を防ぐためには、労働時間に関する定義や判断基準を社内で共有することが非常に重要です。
また、就業規則や労使間の取り決めで曖昧な表現が残っている場合は、そこを明確化することが、不要な紛争を避ける最も効果的な方法となります。

労働時間には複数の区分があり、それぞれ役割や扱い方が異なります。意味の違いを整理しておくことで、残業代の基準やシフト管理の考え方が明確になり、制度運用のミスも防ぎやすくなります。
法定労働時間とは、労働基準法が定める「これ以上働かせてはいけない」という上限時間を指します。
一般的には 1日8時間・週40時間が原則となりますが、この基準は企業規模や職種に関係なく、すべての使用者に適用されます。
(労働時間)
労働基準法|e-Gov 法令検索
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
法定労働時間の特徴は、企業が自由に変更できないという点です。所定労働時間とは異なり、会社側の裁量で延長したり短縮したりすることはできません。この上限を超えて従業員を働かせる場合は、36協定の締結と届出が不可欠となり、これを怠ると法令違反となります。
特に繁忙期などで上限を超える可能性がある企業は、特別条項の正しい理解と運用が欠かせません。関連する詳細は、36協定の特別条項とは?上限規制と正しい運用ルールを社労士が解説も参考になります。
また、法定労働時間は 残業代の発生基準にも直結します。たとえ所定労働時間が短い企業であっても、法定労働時間を超えて働けば時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
つまり、企業側の柔軟な働き方の設計とは別に、法定労働時間は従業員保護のための最低基準として機能していると言えるでしょう。
所定労働時間とは、企業が独自に設定する「日々の通常勤務時間」のことです。
就業規則や雇用契約書に明記されており、法定労働時間の範囲内であれば自由に設定できるという柔軟性があります。
所定労働時間は、企業の働き方や業務特性によって大きく異なります。
例えば、7時間勤務を採用している企業もあれば、1日の所定労働時間を6時間として効率性を重視する企業もあります。このように、企業文化や経営方針に合わせて設計できる点が特徴です。
ただし、所定労働時間と実際の勤務時間とのズレがあると、社員側に「残業なのかどうか」が判断しづらくなることがあります。そのため、労働時間管理の運用においては、以下のような点を整理しておくことが望ましいです。
これらの取り決めが曖昧だと、勤怠管理の実務で混乱が生じることがあります。企業は、所定労働時間を設定するだけでなく、その運用と従業員への周知まで含めて明確にしておくことが重要です。
実労働時間とは、従業員が実際に業務に従事していた時間を指します。
ここで重要なのは、従業員が何らかの“労働”を行っていた事実が必要だという点です。
たとえば、パソコン入力や接客など目に見える作業だけでなく、会社の指示で行われたミーティング、準備、片付けなども実労働時間に含まれます。
一方で、「業務につながる行為かどうか」が判断のポイントになります。
例えば、従業員が自主的に行う資格の勉強や、私用メールの対応は通常、実労働時間には含まれません。
ただし、企業が黙示的に「やらざるを得ない」状況を作っている場合は、評価が変わる可能性があります。
そのため、実務上は “業務に必要であるかどうか” を明確に整理し、従業員にも共有しておくことが望まれます。
実際にどこまでが労働時間に該当するのか理解できると、次に気になるのが「残業代はどう計算するのか」という点です。残業代の計算方法や除外できる手当を確認したい方は、残業代の計算で除外できる手当とは?7つの手当と正しい判断ポイントも参考になります。
拘束時間とは、始業から終業までの「職場にいなければならない時間」を指します。
実労働時間に休憩時間を加えたものという位置づけですが、実労働時間とは性質が大きく異なります。
拘束時間が注目される理由は、労働時間管理の中で“企業側の責任範囲”を整理するうえで重要な指標だからです。
たとえば、従業員が会社に滞在している時間が長くても、そのすべてが労働時間になるわけではありません。しかし、従業員の健康管理や働きすぎ防止を考える際、拘束時間の長さは無視できない要素になります。
また、拘束時間が長くなる職種ほど、休憩時間の取り方やシフトの設計が難しくなる傾向があります。「勤務時間の見直しが必要かどうか」を判断する際、拘束時間の長さは非常に参考になる指標です。
労働時間の管理では、4つの概念(法定・所定・実労働・拘束時間)を明確に区別することが不可欠です。
しかし現場では、この4つが混同されやすく、特に「どこからが残業なのか」「何を賃金計算の基準にすべきか」で迷うケースが目立ちます。
そこで、理解の補助として最低限押さえておきたい整理ポイントをまとめます。
| 時間区分 | 主な意味・役割 |
|---|---|
| 法定労働時間 | 企業が超えて働かせてはいけない上限時間(法律で固定) |
| 所定労働時間 | 企業が設定する通常の勤務時間(法律の範囲で自由に設定) |
| 実労働時間 | 実際に働いた時間(残業代計算の基礎) |
| 拘束時間 | 職場にいなければならない総時間(実労働+休憩) |
この4つを混同すると、残業代の計算ミスが発生したり、管理監督者と一般従業員で認識がずれたりする原因になります。
特にポイントとなるのは、
このように役割が全く異なるという点です。
企業がこれらを正しく区別できるかどうかは、勤怠管理の精度に直結します。
志賀佑一労働時間制度を見直す際は、この4つの定義を軸に整理すると、より実態に合った制度運用が可能になります。
労働時間の判断は、そのまま賃金計算にも影響します。特に、この2つを混同してしまうと誤った計算や未払い残業につながる恐れがあります。
時間と賃金の関係をより深く整理したい方は、知らないと損する?賃金と労働時間の正しい関係とルールを解説も参考にしてみてください。


休憩は労働時間とは別に扱われるため、両者の境界を理解しておくことが欠かせません。自由に利用できる時間なのか、業務と密接に関係しているのかによって判断が大きく変わります。
休憩時間とは、労働者が業務から完全に離れて自由に使える時間のことをいいます。
ここで重要なのは「休息」ではなく「自由」であるという点です。
たとえ同じ事業所内にいたとしても、スマホを見たり、外出したり、私用で時間を過ごせる状態であれば休憩時間に該当します。
逆に、表面上は休んでいるように見えても、従業員が会社の都合で場所や行動を制限されている場合は、休憩とは扱われません。
また、休憩時間は実労働時間とは異なり賃金支払い義務はありませんが、労働者にとって自由が保障されていることが法的条件となります。



この条件を満たしていない場合、形式上の「休憩」として扱うことはできません。
休憩時間には、労働基準法によって最低限確保すべき時間が定められています。勤務時間の長さに比例して休憩を与えることで、従業員の健康や安全を守るねらいがあります。
最低基準は次のとおりです。
| 労働時間 | 必要な休憩時間 |
|---|---|
| 6時間以下 | 不要 |
| 6時間超〜8時間以下 | 45分以上 |
| 8時間超 | 60分以上 |
この基準は、「労働時間の途中」に与える必要があります。始業前や終業後にまとめて時間を取っても、それは休憩としては認められません。
企業によっては、上記の基準より長い休憩を付与することも可能ですが、いずれにしても自由利用が担保されていることが前提条件になります。
休憩時間中は、従業員が業務から離れて自由に過ごせる時間でなければならないため、使用者がその時間に業務を依頼した場合、状況は一変します。
その瞬間から 休憩時間は「労働時間」として扱われることになります。これは、業務に関する指示があった時点で従業員が指揮命令下に置かれるためです。
代表的なケースとしては次のようなものがあります。
これらは形式的に「休憩」とされていても、実態としては業務遂行のための行動であるため、賃金支払いが必要です。
企業としては、休憩時間を適切に確保できているか、不要な呼び出しが発生していないかを定期的に確認することが重要です。
特に、忙しい職場では「つい頼んでしまう」状況が発生しやすいため、運用ルールを明文化しておくことが望まれます。
実際の業務では、作業をしているように見えない時間が労働時間と評価されるケースが多くあります。状況に応じた判断基準を理解しておくことで、誤解やトラブルを防ぎやすくなります。
労働時間とみなされる時間とは、従業員が直接作業をしていなくても、会社の指揮命令下に置かれているために自由に行動できない時間を指します。
見た目では「働いていない」ように見えても、会社の判断や業務の必要性によって拘束されている場合、その時間は労働時間と扱われます。
たとえば、業務の指示を待っている時間や、上司から呼ばれた際にすぐ対応できるよう待機している状態は、従業員が自主的に自由時間を過ごしているとは言えません。
また、会社が明確な指示を出していなくても、“従業員として対応が必要だと判断せざるを得ない状況” にある場合も労働時間に該当する可能性があります。
このように、実際に作業をしているかどうかではなく、従業員の自由がどの程度確保されているかが判断の軸になります。
「みなし労働時間」という言葉はよく使用されますが、実務上はその意味を誤って理解しているケースが少なくありません。
特に多いのは、次のような誤解です。
本来のみなし労働時間とは、裁量労働制など特定の制度を正式に導入した場合のみ適用される概念であり、一般の職場で起きる待機時間や準備時間とはまったく別の仕組みです。
そのため、制度を導入していない職場において「これはみなし労働時間だから」という説明がある場合、実態に合わず法律上誤った運用につながる恐れがあります。



誤解を避けるためには、「どの時間が労働時間として扱われるのか」を明確に区別し、制度上の“みなし労働時間”と混同しないことが重要です。
待機・準備・研修といった時間は、場面によって労働時間に該当したり、しなかったりするため、判断が難しいと感じる企業も多い部分です。
これらが労働時間となるかどうかは、使用者の管理下にあるかが判断基準になりますが、特に次の視点が重要になります。
| 判断視点 | 労働時間と認められる典型的状況 |
|---|---|
| 業務の必要性 | 作業に必要な準備・後片付けを指示されている |
| 時間拘束 | すぐに業務に対応できる状態を求められている |
| 行動の自由度 | 私用を行う余地がほとんどない |
| 研修の性質 | 会社が参加を義務づけている研修 |
労働時間に該当するパターン
たとえば、店舗の開店準備作業や商品の陳列、引継ぎのための会議などは、その内容に業務上の必要性があるため、通常は労働時間と判断されます。
また、研修については「任意参加」としながら、実態として参加しないと評価に影響するような場合も労働時間に該当する可能性があります。
このように、待機・準備・研修といった時間は、企業側の意図や運用によって労働時間の扱いが変わるため、曖昧な指示や形式的な扱いはトラブルの原因となります。
企業は、これらの判断基準を明確にし、従業員にも理解してもらうことで、より適切な労働時間管理につながります。
労働とは扱われない時間の特徴を整理しておくことで、従業員の自由がどこまで保障されているのかを明確にできます。通勤や私用時間など、日常的に発生するケースの扱いを知ることが実務上のポイントになります。
労働時間とみなされない時間とは、従業員が業務から離れ、会社の指揮命令下に置かれていない時間のことを指します。
この時間は従業員が自由に過ごすことができるため、企業は賃金を支払う必要がありません。
よくある例としては、休憩時間や勤務外の私用時間、会社にいるものの業務と無関係な待ち時間などが該当します。
ただし、外見上は自由に過ごしているようでも、実質的に業務対応が求められる場合は労働時間と判断される可能性があります。
労働時間とみなされない時間は“自由度の高さ”が基準の一つとなるため、企業は従業員が本当に自由に行動できるかどうかを確認しながら運用することが重要です。
通勤時間や私用時間は、一般に労働時間とはみなされません。
通勤は従業員が自宅から職場へ移動するための行動であり、業務とは直接結び付かないためです。また、休憩時間中の私用行為や、勤務前後の私用対応も同様に労働時間には含まれません。
ただし、企業が特定の場所や時間を指定して移動を命じた場合は例外的に労働時間になることがあります。
この点を整理すると、次のようになります。
| 時間の性質 | 労働時間に該当する可能性 |
|---|---|
| 通常の通勤 | 該当しない |
| 業務で必要な移動(外出・取引先訪問など) | 該当する(労働時間) |
| 私用のための移動 | 該当しない |
| 会社の指示で移動する場合(出張など) | 該当する(労働時間) |
特に注意すべきなのは、「通勤の延長に見える移動」であっても、会社の指示によって行われる場合は労働時間になる点です。
企業は、どの移動が業務上必要なのかを明確にしておくことで、トラブルを避けることができます。
労働時間の判断で最も困るのは、明確に労働とも休憩とも言い切れない「グレーゾーン」の時間です。
例えば、始業前の自主的な事前準備、上司を待つ時間、休憩中の軽微な対応などは、業務の必要性と自由度が入り混じるため判断が難しくなります。
グレーゾーンの扱いで誤解が生まれると、残業代未払い問題につながりやすいため、以下のような視点で判断することが有効です。
これらの視点を組み合わせることで、「労働時間と評価すべきか」「自由時間として扱えるか」の判断がより明確になります。
とはいえ、グレーゾーンはあくまで“グレー”であり、企業と従業員の認識が異なることが多いため、就業規則や社内ルールとして事前に明確化しておくことが最も効果的です。



特に始業前後や休憩前後の扱いについては、曖昧にしない仕組みづくりが求められます。


労働時間の把握は、法令対応と働き方改善の双方に影響する重要な業務です。記録方法だけでなく、運用体制や社内ルールの整備を含め、総合的に管理する視点が求められます。
労働時間管理の基本は、まず「何を労働時間として扱うのか」を正しい基準で把握することです。
形式的な勤務時間だけではなく、実際に従業員がどのように働いているのかを把握できていなければ、残業代の計算や労基署の調査で問題が生じます。
労働時間を正確に把握するためには、“客観的な記録”が不可欠です。自己申告のみでは、どうしても実態との差が生じやすく、意図しない未払い残業が発生する原因になります。
また、労働時間の把握は単なる法律対応ではなく、従業員の働き方を改善するための重要なデータにもなります。どの部署で長時間労働が発生しやすいのか、休憩の取り方に偏りがないかなど、働き方全体を見直すきっかけとしても機能します。
企業としては、労働時間の把握を「負担」と捉えるのではなく、リスク管理と働き方の改善に直結する取り組みとして位置づけることが大切です。
勤怠管理にはさまざまな方法がありますが、どの方法にもメリットとデメリットが存在します。企業規模や業務内容に合った手段を選ばないと、記録の抜け漏れや運用の負担が増えてしまいます。
代表的な勤怠管理方法を整理すると、次のようになります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 紙のタイムカード・出勤簿 | 導入コストが低いが、集計が手作業でミスが起こりやすい |
| タイムカード機器 | 打刻の精度は上がるが、設置場所に従業員が集まる必要がある |
| 勤怠管理システム(クラウド) | リアルタイム管理ができ、集計も自動化される |
近年は、出勤場所が複数ある企業やリモートワークが増えている企業を中心に、クラウド型の勤怠管理システムが選ばれる傾向があります。
記録の自動化・客観性の確保・修正履歴の保存など、現代の働き方に適した仕組みが揃っているためです。



ただし、どの方法を採用する場合でも、最も重要なのは「運用ルールを明確にし、従業員に理解してもらうこと」です。
記録方法が複雑であったり説明が曖昧だったりすると、いくら優れたシステムを導入しても労働時間管理は機能しません。
労働時間管理が適切に行われていない場合、企業は大きなトラブルに直面する可能性があります。特に注意すべきなのは、未払い残業・打刻漏れ・管理者判断の曖昧さが積み重なって発生する問題です。
トラブルの典型例としては、次のようなものがあります。
トラブルの典型例
これらの問題は、企業が悪意を持って管理していなくても、運用が不十分であると発生しやすい部分です。
トラブルを防ぐための対策としては、以下が有効です。
トラブルを防ぐための対策
特に管理職の判断ミスは、現場のトラブルの大きな要因となることが多いため、管理者研修や定期的な情報共有が重要です。
労働時間管理は「制度」だけではなく「運用」が大きく影響します。企業全体で一貫したルールを整え、従業員との認識をそろえることで、労働時間に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
労働時間の考え方を整理し、会社全体で共通認識を持つことで、働きやすさの向上とリスク低減が実現しやすくなります。制度と運用をバランスよく見直すことが、持続的な改善につながります。
労働時間の管理は、単に「勤務時間を記録する」だけの作業ではありません。企業にとっては 法令遵守・労務リスクの回避・働き方の改善を同時に達成するための重要な基盤です。
今回解説したように、労働時間には複数の種類があり、それぞれ役割や意味が異なります。
特に、
これらを正しく理解できていないと、日常の運用で誤った判断が積み重なり、結果的に大きなトラブルに発展することがあります。
労働時間制度は一見複雑に見えますが、原則を押さえれば整理しやすくなります。企業としては、“どの時間をどう扱うのか” を明確にし、従業員との認識をそろえながら運用していくことが最も重要です。
企業が労働時間管理でまず優先すべきは、管理の「正確性」と「透明性」を担保することです。複雑な制度を無理に導入する必要はありません。
基礎となる次の3点がしっかりできているかが最優先です。
また、企業規模に関わらず、労働時間管理の基準が曖昧だと従業員との認識ズレが生じ、トラブルの火種になります。
「誰が見ても同じ判断に至る仕組み」を作ることが、労務リスクの削減に直結します。
また、労働時間の理解を深めたあとは、それらを 就業規則にどう反映するかを確認しておくと運用がさらにスムーズになります。
必要な記載事項を整理したい方は、就業規則の記載事項とは?法律で定められた内容と作成ポイントを解説も参考になります。
働き方改革の推進により、企業にはこれまで以上に 労働時間の適正管理と長時間労働の抑制が求められています。
単に法律が厳しくなったわけではなく、労働時間管理が企業の経営基盤そのものに影響する時代へと移行しているのが実情です。
働き方改革と労働時間管理が密接に関わる理由は、大きく3つあります。
健康管理の観点
長時間労働による健康障害リスクが重視され、適正管理が強く求められている。
生産性向上の観点
無駄な長時間労働を削減し、働き方を見直すことで生産性向上につながる。
人材確保の観点
労働時間の透明性が、採用競争力や離職防止にも直結している。
特に今は、人材不足が経営課題として顕在化している企業が多く、「労働時間をきちんと管理できているかどうか」が従業員の安心感につながる時代です。



働き方改革は、単なる制度変更ではなく、労働時間管理の質を見直す絶好の機会です。
企業としては、労働時間の適正化を“義務”としてではなく、組織が持続的に成長していくための投資と捉えて取り組むことが求められています。
労働時間の正しい理解は、企業の労務管理における重要な基盤です。本記事で整理した内容を踏まえると、労働時間は“見た目の働き方”ではなく、従業員がどのような状態に置かれているかが判断の中心であることが分かります。
特に、待機・準備・移動・休憩前後などの曖昧な場面では、企業と従業員で認識がズレやすく、未払い残業や労使トラブルにつながりがちです。
そのため、労働時間の定義や各区分の違いを体系的に理解し、社内で共有しておくことが欠かせません。
以下に、この記事の主要ポイントを簡潔にまとめます。
労働時間の定義を正しく理解し、組織全体で共通認識を持つことは、法令遵守だけでなく従業員の働きやすさ向上にも直結します。
今日の整理を、労働時間管理の改善につなげていただければ幸いです。
労働時間の取り扱いについて、こんなお悩みはありませんか?
労働時間の判断は、ちょっとした運用の違いで大きく結果が変わることがあります。
特に、待機・準備・休憩前後などの“グレーゾーン”はトラブルが生まれやすい部分であり、正しい整理と社内共有が欠かせません。
当事務所では、労働時間の定義から実務運用まで、専門の社会保険労務士が丁寧にヒアリングし、貴社の実態に合わせた最適な管理方法をご提案いたします。
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